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だけれど他の誰でもないアナタの為に
ただただ、驚いたの。
その声からわたしの名前が奏でられたことに。


せんせいは週に1回しか来なくって、
名前を覚えるのが苦手とも言っていたし
いつも誰かに声をかける時はあやふやにするか、
名簿をみるかどっちかだったから。
帰り際の玄関、「気をつけて帰れよ~」と言ったせんせいに尋ねてみたの。

「先生、私の名前は?」
「おっとー、」
「もう3週目です、覚えてますよね当然。」
「ちょっと待ってよ」
「まさかわかんないなんて、言わないですよね~」
「先週の金曜に、名簿とにらめっこしたからな。」
「・・・まだですか?」
「いま頭の中の名簿と格闘中ですよ」

ふんふん頭を抱えて、あーでもないこーでもないと言っている。
やっぱ無理かあ、と「来週までに覚えてきてくださいよー」と言って
ローファーに手をのばした、とき。

「中原かずな」
「え、」
「…だよね」
「せいかい!びっくりしたー」
「よかったー、えって言われるからあせった。」
「だって覚えてると思わなかったから」
「はは、覚えました。もう3週目ですから。じゃ、気をつけて帰れよ、ナカハラ。」
「はーい。せんせいばいばーい。」

「そういう時は さようなら だっつの」という言葉に振り向く余裕なんてなくって
ただただ驚きとどきどきを隠すのに精一杯だった。小走りで学校をあとにする。
低音で響いた、わたしの名前。おまけににこって笑顔。
どうかどうか明日も、あさっても、名前を忘れないでいてもらえますように。
何度もなんども、わたしの名前を呼んでもらえますように。
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