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だけれど他の誰でもないアナタの為に
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ワタくんという固有名詞は、このクラスの女の子たちのうわさ話の中で
一番ダサいと言われているかわいそうな彼のことを指します。
ですが、かわいそうなのはワタくんではなく、
ワタくんのめがねをはずしたときの抜群のかっこよさをしらない彼女たちのことを言うのです。
そして、この学年でノット・かわいそうがこの私と、ワタくんの友達であり私の幼なじみのオサムです。


同じクラスで、影が薄めのワタくんを気になり始めたのは付き合う1ヶ月ほど前。
今からだともうずいぶん前。
教室でワタくんが読んでいた本を私も一度読んだことがあったのがきっかけだ。
(その本の内容はあまりに難しすぎて私にはちんぷんかんぷんだったのだけど)


「うちのクラスにね、ワタくんって人がいるんだけど」

そうオサムに相談してみたらあっさり「俺メル友だよ」との返事。
なんでも、高校受験の時席が後ろで、その時既にワタくんのかっこよさに気づいたオサムは
ワタくんから半ば強制的にアドレスを聞き出したらしい。

「わたしもメールしたい!」

そう言うとオサムは「いんじゃね?」とかちょうてきとーな事を言って、
「やっぱやめようかな」なんて急に怖じ気づいた私を華麗に無視して、
勝手にワタくんのアドレスをケータイに登録した。

最初こそためらったのだけれど、頑張って2日に1回ペースでメールをして、
次第に学校でも話すようになったりして。私たちは友達になったのだ。
それから、またオサムのキューピットのおかげで私たちは一緒に遊びに行くようになったり…と、
確実に「恋人」という道を歩みはじめました。
手もつなぐし(私から)
メールもするし(大抵返事は「うん」だけど)
デートだってするし(ワタくんはすこし退屈そうな顔してるけど)
一緒に本を読んだりするし (ワタくんは本に夢中になりすぎてわたしの声が聞こえなくなるけど)
別にそういうワタくんだって、わかったから、それも全部好きだと思えたから告白をしたの。
でもね、必死に何度も何度も好きだと私が言っても、ワタくんの口からは聞いたことがなかった。
「どうなの?」って聞いたとしても返事は「里奈と同じ気持ちだよ」って。
じゃあ、彼は私が嫌いだと言えば同じく私を嫌うのだろうか。
 
もやもやは消えてはくれなくて、とうとう私からワタくんへメールをする元気を奪った。
私からしなければ、会わない、メールもしない、ましてや抱きしめあうことすら、ないんだね。
かろうじて毎日3言くらいの話はしたけど、本当にそれだけ。
ワタくん、ねえ、どう思ってるの?


ある日、ケータイが鳴った。
期待して開くと、掲示されるのは「オサム」の文字。
ため息と一緒にメールを覗くと 今から家行く とのこと。
そうしたら部屋のドアが鳴った。「はいるぞー」とオサムの声。
いくらなんでも今すぎるでしょう、まあいいんだけど。

「里奈、ワタが心配してたぞ」
「なにを?」
「お前を。」
「どうして?」
「俺が言わなきゃわかんない?」
「…わかんない」
「ふーん。あっそ。だってよ、ワタ出てこい。」

オサムの背中からワタくんは現れた。
「じゃ、俺帰るから」じゃーなーと言って去ってしまった、オサムくん、かっこじゅうろくさい。
 
「里奈、ごめんな」

ワタくんは、悲しい顔をする。私は首を横に振る。
欲しいのはそんな言葉じゃないんだよ。
沈黙を続ける私にワタくんは困った顔をしてみせた。

「嫌いに、なった?」
「…ずるいよワタくん。私はいつだってちゃんと言ってるよ。好きだよ、って。大好きだよって。
 それなのにワタくんは、何にも言ってくれないよね。
 嫌いなのは私じゃなくてワタくんの方でしょう?」
「俺が」
「手だって私からじゃないと繋がれないし、
 メールだってワタくんから始まったことない。絵文字だってないし。
 それでもね? それでもいいと思ったんだよ」
「……」
「だって好きだから、好きだから大丈夫だと思えた。
 けど、好かれてるって証明出来ることがなにひとつだって私にはないって気づいたの。」
 
そしたら、もう、そこから一気にぼろぼろ、なんだよ。
 

涙がこぼれるのがばれないように、下を向いて一生懸命隠した。
そしたら、いきなりしゃがんだワタくんからのキス。

「俺さ、俺へたくそだから、どうしたらいいかわかんないし、
 照れくさくて、その、す きとかも言えないじゃんか。」
 

「だけど」
ほら、と言ってあたしの右手を自分の胸へと引っ張るワタくん。
伸ばした先には強く打つ心臓の鼓動。

「俺の体が、こんなにもちゃんと里奈を好きだって言ってるんだよ」



ダブルパンチでおどろいて、いつのまにかひっこんでいた涙。
ワタくんは、頬の水分を全部手で拭き取って、それからまた私に優しいやさしいキスをおとした。
 みるみるタコのように赤くなるワタくんの顔わたしが笑うと
「だから嫌だったんだよ」、そうすねたように顔を逸らすワタくん。

「ワタくん、ばか」
「ごめん」
「でも好き」
「おれも、里奈好きだよ」
「さっき言ったこと改善してもらえますか?」
「努力します。愛が、ありますから、ね」

さらっと言う。ふたりして恥ずかしくなって笑いながら手を繋ぐ。
温かいこの手がこの先も繋がっているといいなあ なんて願いを
ワタくんの頬に唇でおとす。伝わってるかな?
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どんなに辛くても苦しくても明日は来ると教えてくれたのは、貴女でした。
だから僕は貴女のために なんていう言い訳付きで、今日を生きることができていました。
それなのに、貴女は何処へ行ったのですか?
冷たい抜け殻と、僕の大好きな笑顔を色濃く残して。
そんなんじゃ足りません。
そんなんじゃ、僕は貴女を許すことが出来ません。

生きろと言ったのは貴女じゃないですか。
なのに貴女は僕をまたひとりぼっちに返すのですね。

何処へ行けというのですか?
こんなに苦しいのに、辛いのに、それでもまだ
僕は生かされなければならないのですか?

もし貴女の心が、まだ僕の心臓のものだとしたならば、教えてください。
イエスかノーか。それ以外の答えを。
まつげの間に挟まったモノクロは、潰れて滲んで、世界を映すことを忘れました。
アナタを失くした私のこころは、辛いと 苦しいと 笑っているのに。


こんな眩しい月の下で泣いているのは私だけ。

ねえ、だから迎えに来てよ。
無音の返事は、やがて白に染まって消える。


もしもね、もしもだよ。
私があの時あんな言葉を紡がなければ、今こんなにさめざめと泣くことも
隣にアナタの居ないこの現実すらも、なかったんじゃないかなと思うの。
それでも、今はもう変えられないって どうして気づいてしまっているのだろう。

ミモザは踊る。
零れて地上へ舞い降りる。きらり、月の光をまといながら。
いつだって、いっとうに伝えたい気持ちばかりが、言葉にならない。
僕は相変わらずへたくそな日本語だよ。
それでも、相変わらず、僕なりの精一杯で生きてるよ。
きみは、どうしてるかな?

出会えたのは奇跡、さよならは必然。
わかってたんだ。悲しくなんか、ないはずだったんだ。
いつだって「あれもだめ」 「これもだめ」 のきみのわがままには
もう疲れていたはずだったんだ。

時間はどうして戻せないのだろうか。
きみは、どうして戻ってこないのだろうか。

そうだ、こうしよう。
きみがさよならの時、僕に好きだと言った理由を当てれたら戻ってきてよ。
あてずっぽうでたくさん言うからさ、よく聞いててね。
それでもし当たってたらさ、なんにも言わなくて良いから、
何事もなかったかのように、茶色の扉、きいって音鳴らして僕に笑ってね。

人間ってそれぞれひとりしかいないけど、
きみと出逢って、僕はひとりじゃないって知ったんだよ。

伝えたい言葉があるんだ。「ありがとう」って。
きみの好きな熱いコーヒー用意してまってるからさ。
「ただいま」って、「おかえり」って。また一緒にコーヒー飲もう。
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